東京都の質問回答集

 「非実在青少年」で話題になっている東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正案について、都が質問回答集を作ったそうなので読んでみました<詳しくはこちらから。PDF形式で配布されてます>。
 大騒ぎになったからか、25もの質問を設定の上、回答の形で丁寧に規制の趣旨を説明しています。個別の内容はダウンロードして読んでもらうとして、個人的に注目したのは以下の3項目。
○「性交」「性交類似行為」とは?
 具体的定義は質問回答集で読んでもらうとして(※どうもここで書くと、いろいろまずいみたいなので)、最後に「(これらは)法令用語です」って書いてあるんですよね。実際、いわゆる児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)にもこれらの文言が明文化されているんですな。解釈も決まってるようです。法律にそうあるのでは、下位規範の条例が使うのも当然のことでした。以前書いた記事<こちら>はこの限りで訂正させていただきます。こちらの調査不足でした。すみません。
 ただ、法律にあるからって言ったところで、法解釈として「類似行為」が本当に拡大解釈されないのかって疑念は残るんですけど。そのへんは、上述の記事を読んでいただくか、または児童ポルノ法について書いたときにでも改めて。
○パンチラとか入浴シーンはダメ?
 回答として「性交又は性交類似行為」が明確に描写された漫画などに限られるから「規制することはありません」と明言してますな。その上、「しずかちゃんの入浴シーン」「ワカメちゃんのパンチラシーン」「しんのすけがお尻を出すシーン」とか羅列されている許容例がまた妙に具体的。ここまで言うのなら、東京都条例では表現者はそれほど規制に対して萎縮しなくても済みそうかな、とも思いました。
 が、次の項目が……
○現実の子供の性交経験率は高くなっているのに、子供の性行為を描いた漫画やアニメを子供から遠ざけても意味がないのでは?
 この設問にはびっくりしました。私が極めて疑問に思ってることも、一応問題意識として持っているんですかねぇ?
 で、回答は「通常の子供が経験する性行為と」「強姦や近親相姦などの悪質な性行為」は「明らかに別物であり」「真似て実践してしまうおそれもある」から青少年に見せてはならないんであって、それは「未熟な子供を守る大人としての責務である」とまで言ってます。
 これは、どうなんですかね。都は通常の子供が経験する性行為を全く問題ないと思っているんですか……それでいて「悪質な性行為」の表現は大人の責務として規制すると。ま、「性の自由に対して、規制は最小限なんですよ」って言いたいんでしょうし、「悪質」なのはたしかに規制すべきでしょう。
 しかし、だとしたらなぜ規制対象をその「悪質な性行為」に限定しないのでしょうか。今どきなら「通常の性行為」でもされるであろう「性交類似行為」まで規制対象にしておきながら、「悪質な性行為」だけを抜き出して規制全体の理由にするなんて論理のすり替えでしかありません。論理のすり替えなんてことは、何か他意がある者がすることですよ。
 それに、「大人の責務」って主観的な言い方も引っかかります。それを言い出すと、感情的になって、どんどん拡大解釈する理由になりますから。
 これを読む限り、都の規制したいそもそもの理由に対する疑念は消えないですね。本音では何を考えているのやら。
 
 あと、今回の回答集でもアニメという表現媒体の特殊性については触れられていませんね。前にも書きましたが、アニメでもパッケージソフトであれば販売規制に合理性が認められるかもしれませんけど、アニメ作品は本来放送、つまり公共の電波に乗せるものなんですよ。東京都だけ放送されないってことは技術的に可能な上すでに行われているでしょうし、「他の道府県では放送できるのだから問題ない」という解釈も成り立つかもしれませんが、それは製作者(表現者)にとっては強すぎる規制です。全国ネットのキー局は全て東京にありますから、萎縮効果の点で看過できません。それなのに、都が規制して良いと考える理由が今回の回答書に書いていません(それらしい項目はあるが、そこではなぜか漫画についてのみ回答している。他はアニメも同列に論じているのに、です。アニメについてわざと答えていないように思えます)。この点でも疑念は消えませんね。
 やはり、都や都議会の方々には慎重の上にも慎重に判断していただきたいと思います。
 
 先日の「非実在青少年」の記事を書いてからも、あれこれ調べてみています。今回の条例改正案も大いに問題ありですが、今回の規制は正直なところ「序の口」程度です。問題の本質は、国の法律である児童ポルノ法の方でしたよ。
 今まであの法律を詳しく読んだことはなかったんですけど……読んでみて驚愕しました。あれは性表現規制という点でもの凄く危険な法律です。「児童ポルノ」という“絶対悪”を理由にしてとんでもなく広範な規制(性欲を刺激するなら衣服を一部着けない18歳に満たない者の姿態ってだけで「ポルノ」だそうで……漫画やアニメには現状適用されないものの、「性欲を刺激」の解釈次第で普通のアイドルグラビアでも適用できる)をかけてますから。上位規範がここまで規制できている以上、都が「今回の条例改正の何が悪いの?」って考えても仕方ないことかもしれません。前にも書いた通り児童ポルノ禁止自体を反対するつもりは毛頭ないのですけど、このままで単純所持禁止までされたら本当にこの国は大変なことになりますよ。こんな法律が、施行されて何年も経ってるとはなぁ。一国民として「知らなかった」じゃ済まされませんわ。
 今回の条例改正案に著名漫画家さん達が反対を表明したりしましたけど、表だった反対運動をするならば児童ポルノ法も含め性表現全体を考える形にしないとどうにもならないでしょう。あの法律の規制を適切な程度に修正しない限り、今後もっと強い規制が条例レベルでもあちらこちらで出てくるでしょうな。
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One Response to 東京都の質問回答集

  1. ピンバック: 「非実在青少年」と「健全な青少年」 | Bleumer's Diary 「詮無きことを」

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